HP「東江戸川工廠」のブログです。

2010年04月30日

「正説 レイテ沖の栗田艦隊」

「正説 レイテ沖の栗田艦隊」大岡次郎/新風書房(2010)

産経新聞で紹介された記事を見て入手しました。
一般書籍と違う自費出版系の本なので一般書店に入らなくてちょっと困りましたが、ジュンク堂で仕入れていてくれたので助かりました。

422ページ、2100円(税込)。気合い入れれば1日で読めます。
著者は海兵78期。
というわけで、栗田中将とは縁がなかったわけでもなく、それをきっかけに栗田中将と親しくなり、この本が生まれたということになります。
栗田中将以外にも海軍士官の中に広く知己を得ており、著者が彼らから直接聴取した言葉が頻繁に登場します。
マリアナ沖の3Sf司令官大林少将やレイテ沖の大和主計長の石田恒夫少佐をはじめとする人々の言葉が集められています。
これらの言葉だけでも結構な価値です。

「聞き語り」のように発言をそのまま文章に起こした的な表現ではなく、きちんとフィリピン沖海戦(もちろん航空特攻も含んで)の筋を追いながら要所要所に栗田中将はこう判断した的な文章を挿入しています。
ですからレイテ沖の流れをよく知らない人でも戸惑うことはないと思います。
詳しく知っている人は、この解説からどの点が自分の問題意識と異なるのか確かめながら読み進めることが出来るでしょう。
栗田中将擁護の立場に立ちつつも比較的冷静な筆運びであり、最近の威勢だけはいい本を読んだときにありがちな顔をしかめたり苦笑したりするようなことには決してならないと思います。
少なくても私はそうでした。

さて、フィリピン沖海戦最大の山場であるいわゆる「謎の反転」の理由について、著者は短いながらも栗田中将の言葉をそのまま示しています。
理由というよりも、栗田中将の胸中と言った方が適当かも知れません。
この部分に関しては著者が「解釈」することは厳に慎んでいます。
この一点だけでも本書上梓の価値は十二分にあったと感じます。

というわけで、なかなかの良書だと思います。
いずれ光人社あたりで再版していただけると良いと思います。文庫なら再度買ってもいいです。
今はとにかく入手しづらくて、私の周囲の人たちも結構苦労していますので。
posted by じゃむ猫 at 14:57| Comment(1) | TrackBack(0) |